会計基準「工事契約(CONSTRUCTION CONTRACTS)」は、国際会計基準でも第11号として公表されています。
タイ国会計基準としては、2015年改訂版が仏歴2559年(西暦2016年)1月1日以後に開始する事業年度から発効しています。
2015年版改訂以前の基準は、マザーブレイン月報2012年2月号において概説しております。2015年版改訂による重要な変更はありません。
|
なお、中小企業等のための会計基準(TFRS for NPAEs)では、第20章(第358項〜第381項)において工事契約に関する記述がありますが、当基準との大きな違いはありません。
当基準は、施工者の財務諸表における工事契約の会計処理にあたって適用されます。目次は以下のとおりです。
目的
|
|
項
|
範囲
|
|
1
|
定義
|
|
3
|
工事契約の結合および分割
|
|
7
|
工事契約収益
|
|
11
|
工事契約原価
|
|
16
|
工事契約収益および費用の認識
|
|
22
|
予想損失の認識
|
|
36
|
見積りの変更
|
|
38
|
開示
|
|
39
|
発効日
|
|
46
|
(1)
工事進行基準
工事契約の結果が信頼性をもって見積もることができる場合は、その請負工事の報告期間の末日現在の工事進捗度に応じて、収益および費用として認識する必要があります。
工事契約の進捗度は様々な方法により決定されますが、行った作業を信頼性をもって測定できる方法を用います。契約の性質上に応じて、以下のような方法から選択されます。
(a) 実施した工事に対してその時点までに発生した工事契約原価が、契約の見積工事契約総原価に占める割合による方法。
(b) 実施した工事の調査による方法。
(c) 契約に基づく工事の物理的な完成割合による方法。
(2)
固定価格の契約の場合の工事進行基準
固定価格の契約とは、施工者が固定された契約価格または単位出来高あたりの固定率で請け負う工事契約をいい、原価(上昇)修正条項が付される場合もあります。
固定価格の契約の場合、工事契約の結果は以下のすべての条件が満たされた場合に信頼性をもって見積ることができます。
(a) 工事契約収益の合計額が、信頼性をもって測定できる。
(b) 契約に関連した経済的便益がその企業に流入する可能性が高い。
(c) 契約の完了に要する工事契約原価と報告期間の末日現在の契約の進捗度の両方が信頼性をもって測定できる。
(d) 契約に帰属させることができる工事契約原価が、実際に発生した工事契約原価を従前の見積りと比較できるように、明確に識別でき、かつ、信頼性をもって測定できる。
(3)
コスト・プラス契約の場合の工事進行基準
コスト・プラス契約とは、許容可能なあるいは一定の原価に、その原価に対する一定率または固定の報酬額を加えたものが施工者に支払われる工事契約をいいます。
コスト・プラス契約の場合には、工事契約の結果は以下のすべての条件が満たされるとき、信頼性をもって見積もることができます。
(a) 契約に関連した経済的便益がその企業に流入する可能性が高い。
(b) 契約に帰属させることができる工事契約原価が、個別に支払われるか否かにかかわらず、明確に識別でき、かつ、信頼性をもって測定できる。
(4)
工事進行基準が適用できない(=工事契約の結果が信頼性をもって測定できない)場合
工事契約の結果が信頼性をもって見積ることができない場合は、収益は、発生した工事契約原価が回収可能であると見込まれる範囲まで認識し、原価は、発生した期間に費用として認識する必要があります。
契約の結果を信頼性をもって測定することを妨げる不確実性が存在しなくなった場合には、その時点で工事進行基準を適用します。
(5)
予想損失の引当計上
工事契約総原価が工事契約総収益を超過する可能性が高い場合、予期される損失はただちに費用として認識されなければなりません。